超高齢化と核家族~準備しておくこととは~ 第2回 身元保証人を求める理由は
第1回「進む社会情勢の変化」でご説明したように、現在は超高齢化や核家族化にともない社会情勢がめまぐるしく変化しています。無縁(孤立)社会という言葉のとおりに家族や地域の方との関わりが希薄になっていると感じます。そこで困るのが身元保証人の問題です。無縁(孤立)状態になってしまうとなかなか身元保証人を頼める人が見つからないというような状況に陥ります。
しかし、そんな無縁(孤立)状態の人に対しても身元保証人が求められるケースは少なくありません。法律上では必ず身元保証人をつけなければないというようなことはありません。しかし、それではなぜ病院や施設などでは身元保証人を求めるのでしょうか。
日本では病院に入院(転院)する際や施設に入所する際、民間や公営の住宅に入居する際や就職・入学する際など多くの場面で身元保証人が求められます。このようなケースで身元保証人を求める理由としては、もし何かあった場合に身元保証人にその問題に対して解決にむけて対応をしてほしいからだと考えます。この”もし何か”とは、受け入れする側(病院や施設など)が本人に関係する困った問題や事柄のことを指します。
例えば、病院では治療費が未払いになってしまった場合やご本人が判断できない状態での治療方針や手術などの同意、ご本人がお亡くなりになってしまった時の身柄の引き取りなどです。施設においてもケガや病気などで施設から病院に緊急入院する際の手続きや施設から転居する際の細々とした引き継ぎ事項の対応、ご本人がお亡くなりになって残ってしまった遺品の整理などの対応を身元保証人に対して求めます。以上のとおりに受け入れする側(病院や施設など)が判断や対応に困った場合に身元保証人に対応を求めるわけです。
また受け入れ側からすると現在は個人情報保護の点などからご本人にどんなご家族がいるのか調べることが困難です。また受け入れする側はご家族からの厳しい苦情や後でトラブルになる恐れを軽減するためにより慎重な対応になっているのだと考えます。こうした点から身元保証人に限らず、同意書や念書などのさまざまな書類の署名や捺印を求められるケースが増えたのかもしれません。こうした書類に対する手続きなどに対しても遠方に住むご家族やご親族は多くの負担を感じます。
また高齢者の方がこのような書類の記載内容を十分に理解するのには困難がともない不安を感じることも少なくありません。また私どもしんらいの会がご本人のご家族ご親族に代わって身元保証人を務める際によく言われることが3点あります。
1つ目は、経済的な不安です。ご本人の収支や資産・負債の状況がわからない場合などによくあります。2つ目は、時間的な不安です。急に病院などから呼ばれても対応できるのか不安だということです。そして3つ目は、知識不足による不安です。病院や施設からのさまざまな相談にどのように応えたらよいのか、手続き等にどう対応したらよいのかというような不安です。引き受ける側が遠方に住んでいたり高齢であったりした場合に、さまざまな問題にきちんと対応できるのか不安にかられてしまうことがあるようです。
そして病院や施設からよく「もう一人、身元保証人をつけてください」というようなケースがあります。それは、身元保証人がその方だけでは不安なケースだと考えられます。病院や施設が身元保証人に対して求めるものとは、きちんと対応する能力があるのか、信頼性は十分にあるのか、永続的な対応をすることが可能なのか、という対応能力、信頼性、永続性に不安がある場合にお願いすることがあります。
このように病院や施設などは、身元保証人に対して”もし何か起きたとき”いろいろな相談を聞いてくれて、きちんとした対応をし、最後まで関わってほしいと願っているのです。これからますます身元保証人を強く求められるケースが増えていくのではないでしょうか。それではこの身元保証人と成年後見人とはどのように違うのでしょうか。詳しくは『第3回 身元保証人を求める理由へ』でご説明いたします。
2011.6.9 常陽新聞掲載